good-audience’s diary

良い客とは何でしょうか

良い客とは何か

良い客は、その価格の理由・意味を知っています。

良い客は、適正な金額を支払います。

 

それは、必ずしも教養が高いことを意味しません。

それは、必ずしもお金持ちであることを意味しません。

 

良い客は、買わなかったことを後悔します。

悪い客は、買ったことを後悔するします。

 

 

小山登美夫

『“お金”から見る現代アート』(p62)僕にとっての「いいお客さん」

僕が取り扱うアーティストたちを決めるときの基準は、“好きだ”とか“これはおもしろい”ということだけではない。「そのアーティストが美術の歴史の中で、重要なことをしようとしているかどうか」を見極めるのも、僕たちギャラリストの仕事。そして、それを買ってくれるお客さんも、その部分を見抜いて買ってくれているはずだと思っている。そういう思いをわかってくれて、おもしろがってくれるのが、僕にとっての好ましいコレクターで、そういう買い方をしてくれる人の存在が、アーティストたちにとってみても、とても大事なのである。

 

小山薫堂

forbesjapan.com

考えてみると、アートの“価値”というのは、その作家や作品に対してどれだけ深く熱中してくれる人がいるか、という気がする。たとえば奈良美智さんの絵を10万円なら買うという人が1,000人いるより、1億円でも買うよという人が3人いるほうが、作家に対する価値が高くなる。もっと言えば、ふたり、熱烈なファンがいれば、その人が巨匠になり得る可能性が出てくる。オークションでふたりが競り合って高額な価格で落札された瞬間、作品の価格は作家の価値となり、一般的に周知されていくわけだから。

 

なんにせよ、人の才能やつくった作品にお金を張れる人というのは素晴らしい。アートにおけるお金というのは、それ自身を輝かせる“スポットライト”のようなもの。作家だけが文化をつくりだしているのではない。スポンサーやパトロン、ファンだって文化に貢献しているのだ。

 

もうひとつ、アートの価値という観点で素晴らしいと思っていることがある。お茶の世界で茶道具の良いものを持っている人は、「お預かりしている」という言葉をよく口にされる。自分が所有しているのではなく、「いまの時代は私が預かることを許された」という美意識。そうやって時代を経て、人から人へと作品を受け継いでいくことで、価値というのはいや増すのだろう。

 

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